国の漢方専門家から疑問視される「エビデンス漢方」

漢方にはエビデンスは馴染まないという意見は、漢方と漢方薬を本業とする医師や薬剤師のほとんどが同意見である。

裏では、もっぱら日本漢方の行く末を危惧する声は相当に多いが、公然と発表する人が皆無に近い。

漢方関連の専門用語にしても、エビデンス漢方および日本漢方(吉益東洞流)が、世界から孤立している。

専門用語に混乱があり過ぎるのは、早くから指摘されていることで、数十年前には東亜医学協会の機関誌『漢方の臨床』などで、喧々諤々の議論も行われたが、医療用漢方が全国的に広く使用されるのに並行するかのように、発展的な議論が公然と行われることはほとんど無くなってしまった。

漢方の専門家でない一般の医師が、簡単に漢方薬が投与出来るように、との配慮からエビデンス漢方が推進された、と考えられるが、いまやその弊害が、全国各地で噴出している。

これまで思いもよらなかった医療用漢方による副作用発生問題である。

いずれも、漢方の専門家でもない一般医師による安易な投与が問題だ、と裏ではささやかれるのみで、公然とは批判されないのが、この日本社会のいいところでもあり、困ったところでもある。

エビデンス漢方とは、要するに「病名漢方」ということで、病名や症状だけにあてはめて漢方処方を投与するという、いささか乱暴な使用方法である。

漢方の基礎理論を全く、本当にまったくご存じない先生方が、安易に医療用漢方を投与しているのが、日本医療界の現実なのである。

特にエビデンス漢方を推進する関東勢に対して、関西の各漢方の専門家たちから、危惧する声が高まっている。

漢方の理論面およびこれに伴う専門用語においても、世界から孤立するエビデンス漢方派と日本漢方(吉益東洞流)が関東勢であると、些か乱暴ながら、日本全国の漢方専門家から危惧されているわけだが、一般社会にはほとんどもれることがない。

一度、公然と学問的な議論がなされればいいのだが、未だその動きが見られない。

以上が、日本漢方界で最も危惧されている問題点である。

 
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